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中国製真空管アンプの研究(2012.4月~)

近年、中国製の激安オーディオ機器がオークションその他で販売され、手軽に入手できるようになりました。入門者や自作派(改造や自作ベースとして)、研究マニアなどに結構売れているようです。

この記事を書いている2012年現在、ヤフオクで売買されている真空管アンプは、オークファンで検索すると月に700台規模(記事執筆時のデータ)のようです。これは、中古も含まれます。そして、平均取引価格が4万円台ということです。

真空管アンプ(オーディオ用)の価格というのは、もちろんピンキリですが、従来あまり安いものはエレキットなど入門キットの一部に限られていました。普及価格の入門キットというのは、球の数も最小限にして、規模の小さい回路に徹し、使用球も安く入手できる(=性能低いではない)種類の中国やロシア製というのが一般的でした。

百十番が、最初の頃にどうしても真空管アンプの音が聴きたくて、入手を試みた際はキットとヤフオクの中古品(しかもジャンク)から選定したのを記憶しています(今となっては懐かしい思い出)。

そういう状況から約10年経過して、真空管アンプの人気も定着しつつある昨今、ヤフオクの平均価格4万円台というのは、そうとう中国製の激安アンプが影響を与えていると考えられます。

1.そもそも真空管アンプの新品価格は?

☆5万円未満

上に書いた入門者用キットかその完成品、あるいは出力トランスを使用しないプリアンプ(ラインプリ)が一般的。

筆者の自作した、12BH7ラインプリは、小さな真空管(しかも安く入手できる球)が2本、カソードフォロアにすれば1本でもプリアンプが製作できます。

12BH7A SRPP NON-NFB

どうしても高くつく出力トランスが不要で、使用電力も小さいので電源トランスも小さなもので安くつきます。パーツも少ない。大きさも小さいので、シャーシかケースも工夫すれば安くできます。

パワーアンプなら、筆者の国民機2号は真空管が4本(もちろんこれも安く入手可能)で、この回路はむしろ出力半分の2本のタイプが昔からの定番です。

エレキットでもありますが、昔は(東京オリンピックとかの頃?)家庭用ステレオセットの定番は、これに高能率スピーカーを組み合わせて全体を家具調の一つの木の箱に入れて木の足がついているようなものでした。

6BM8という、1本の小さな真空管に電圧増幅管と電力増幅管の2つのユニットが入っていて、これだけで出力アンプが構成可能という本来はテレビ用の真空管で、類似球もあります。こちらも出力トランスさえ安くあげれば結構安価に製作可能です。こうしたものなら、完成品でも5万円未満でも市販可能ですね。

☆5万円から10万円未満

自作なら、凝った回路でなければ本格的なアンプが製作可能です。ただし、シンプルな回路のものか(例はこれとか)、中古部品を使用するなど工夫は必要です。何も考えずに必要パーツや納得のいく球を買い集めると、すぐに10万円は超えてしまいます。ラインプリなら出力トランスなどを使わなければ楽勝でしょう。

パワーアンプの場合、回路がシンプルで部品の少ないシングルアンプが一見安そうですが、シングル用の出力トランスはどうしても高くつきます。程ほどの内容のプッシュプルにするか、安価なシングル用の出力トランスを使うかどちらかで、結構どちらにするかは悩ましいので、結局両方作ったり買ったりしてしまいます。

どちらにせよ、高くつくトランスは必要最低限にしないと予算オーバーですので、高出力アンプやトランス結合回路は厳しくなります。完成品なら、シャーシや流通経路などを工夫するか、工賃の安いプリント基板(要注意)を使えば市販可能ですね。

☆10万円から20万円未満

(2020.3追記)当時は、なかなかご紹介できそうな製品群が乏しかったのですが、その後、この価格帯なら割と使える製品が輸入されるようになりました。アマゾンなどでもかなりそろっていますね。真空管アンプをかれこれ20年前から啓蒙してきた百十番の隠れた功績も小さくないかと思っています(結構本気)。

2.安いアンプを買ってみました

買ったのはコチラの6L6プッシュプルです。

中国製6L6プッシュプル

既に手元にはありませんが、購入時に付いていた中国製やロシア製の球ではとうてい満足できませんでしたので、すべて手持ちの貴重なビンテージ管に挿し換えました。特殊な回路構成ではないので、これだけで充分満足のいく音質が得られました。問題ないというか私の自作するアンプ類と音質的には遜色ないです、本当。その後、mixiで知り合ったオーディオ仲間に乞われて、彼の所有・製作するオーディオアクセサリーと物々交換しました。

お譲りした相手は、真空管パワーアンプが初めてで、エレクトリックギターを弾く方なので、ギターアンプでも定番の6L6ということで自己陶酔に陥り、感激しまくって何週間か電源入れっぱなしで聴き続けたら、さすがにご臨終してしまいました。残念ながら、初期救命のまずさもあり、その後は部品の塊となったそうです。

3.まとめ:耐久性に問題があるケースが

教訓として、安いだけに耐久性に疑問のある部品が使用されており、寿命には不安があります(想像を超える部分もあり、電源ケーブルはまるで電話線のようでしたし、アンプの大きさからどうみても排熱設計のまずさが)。

日本でも、家電品は10年もてばいいやという製造のされ方をされていますが、真空管アンプを家電品として製造するのは「考え違い」だと思っています。真空管アンプというのは、きちんと空中配線(手配線)で作ったものはかなり長持ちしますし、メンテすれば半永久的に使えます。

ビンテージオーディオの世界では、1940年代のアンプが、驚くほど高価に取引されて、状態のよいものは素晴らしい再生音を聴かせてくれたりします。真空管アンプは家庭用電化製品ではありません。茶器などと同じで家宝として考えるべきものだと考えています。もう一つの教訓は、アンプが安くても、納得のいく球に挿し換えると、ともすると本体以上の費用が必要になります。

球を買い集めるのも楽しみのひとつなので、マニアからするとそれも楽しやですが、安く上げたいと考えている人には要注意です。

(2020.3追記)当時も、中国製でもメーカーによっては耐久性も標準的と思える製品を出しているメーカーはありました。当然ながらそうしたメーカーは激安まではいかない価格帯でしたが。

その後、直接や間接的に(ちゃんとした輸入事業者もあれば転売屋さんなど)日本で販売される製品も増えています。一方で、PSE法が施行され、安易な輸入は法的に販売者が対処される状況になっています(これをごまかすためにシールを適当に作って根拠なく張るケースもあるらしい)。安くて好感の持てるものも多いのですが、安さだけにつられると失敗するケースも依然としてあると思いますのでご注意ください。

4.注意事項(2020.5追記)

上記の耐久性以外にも注意したいことがあるので、項目を追加しました。最近では、さらに中国製品も品質向上したものもあり、一方でプリアンプ(ラインアンプ)のみ中国製真空管アンプにして、良い結果を得ている仲間の報告を数多く耳にするようになりました。

このページでは、過去のいきさつから、否定的なトーンで解説していますが、今では、アドバイスされてお薦めする(素性の知れた商品やメーカーのモノ)ことも少なからずあったりします。

その上での注意点です。

ACアダプター製品

真空管ラインアンプなど、オーディオ関係の小電力機器では、外付けのACアダプターで動作するものが多く販売されています。これを別売りもしくは別メーカー品セットにすれば、上記のPSE法の規制から逃れられます。一方でユーザーは、すでに手持ちのACアダプターがあり、電圧や電流容量がマッチすれば、新たに購入するよりコストが下がります。また、音作りも加味して、好みのACアダプターを選択できるというメリットもあります。

注意点として、通常よく販売される安価なACアダプターは、スイッチング電源を使用しており、多くの場合、スイッチングノイズがオーディオマニアの間では嫌われます。デジタルアンプでは、偶然相性が良くてスイッチング電源でも高音質という場合もありますが、ノイズ面ではアナログ電源か、高度な電源ノイズ除去回路を併用しないと、音質的レベルが見込めず、何のために真空管機器を導入したのかわからなくなります。

110Vの電源電圧仕様

パワーアンプなどで、電源トランスを搭載している機器の場合、中国製の多くは「日本の電源電圧に対応」として110Vが選択可能になっています。日本の商用電圧は100Vですので、10%は誤差となり、多くの場合、正常(に近い)動作します。

しかし、厳密にいうと、真空管の場合、ヒーターやフィラメントで10%は許容範囲ぎりぎりとなります。また、増幅回路へのB電圧は、真空管の特性から厳密に計算されて設定されており、元の電圧が10%狂うと、B電圧では14%くらいの誤差となり、設計通りの性能が期待できなくなります。これを回避するためには、コンセントからの電源を10%昇圧する機器が必要となり、その機器のオーディオ的性能やコストを気にする必要が生じます。今のところ、マニアの報告では、結果オーライで気になるほどの問題は生じていないという話が多いですが、念のため注意する必要があると思います。

 

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