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過去の作品集:8012A宍戸式送信管アンプ

過去の作品:8012A宍戸式送信管アンプ

(2003年10月完成)

制作過程を公開

Ozekiさんよりお貸し頂いたRCAの送信管8012Aで、宍戸式送信管イントラ反転アンプの製作に挑戦します。今回は、製作段階から公開して行こうと思います。
今までの作例では、ラインアンプを除き穴明きシャーシなどシャーシの加工に手を抜いていました。工具も有りませんでしたし。しかし、徐々に工具もそろったので本格的に穴あけからチャレンジします。更に、どうせだったらシャーシそのものも自作する事にしました。
このタイプのアンプは、suzukiさんのページにすでに作例があります。私が作ろうとするアンプはすでにsuzukiさんが試しているという因果関係がますます強固になっています。suzuki師匠これからもよろしく。
宍戸公一氏(故人)の著書やsuzukiさんのレポートでは、このイントラ反転送信管アンプは300Bなど直熱オーディオ管を上回る良い音だとか。期待しちゃいます。

ホームセンターで、枠の部材を購入して

ホームセンターで真空管アンプシャーシの部材購入

まずは、ホームセンターで手軽に手に入る材料でシャーシの組み立て。しかし、ここにいたるまでの構想段階はそれなりに大変でした。各地のホームセンターに何度通った事か。

アルミ板を乗せて、部品配置を検討

真空管アンプ製作のため、シャーシ上に部品を配置

外装部品を収集後配置の検討です。他の作例では、中央に電源トランスで、左右セパレートスタイルですが、ここは業務用アンプスタイルに学んだ、信号の流れに近い配置で。

アルミ板に穴あけ加工

真空管アンプ穴あけ加工

穴あけが進みトランスも固定していきます。気が付かれたかと思いますが、今回のアンプはすべて丸穴で出来るように部品を工夫しました。電源インレットだけはまん丸というわけに行かず、少しやすりで角っぽく削りましたが、電源トランスの角穴は省きました。丸穴で済む電源トランスというのがなかなか無くて、苦しみました。

電源トランスはむき出しにしないで

真空管アンプ製作、トランスにカバーを

結局電源トランスは4個となり、シャーシ上に2つ中に2つです。シャーシ上のトランスの処理は、Ozekiさんに教えてもらった方法(小型シャーシを買ってきて被せる)です。

外見はアンプらしくなってきた

アルミ板を枠に固定して、さらに主要部品を取り付けたので、外見はかなり進みました。GWがあったので結構進みましたが、工具やビス・ナット・金具類が思ったよりも必要になり結構買い足しました。ホームセンターが歩いて3分なので、気軽に買い足せるのですが、投下予算はどんどん膨らみ懐が軽くなります。トホホ。

なるべく一気に作らない

昨年2A3pp製作時からやっている事ですが、なるべく一気に作らないようにしています。これは、製作が雑になるのを防ぐのと(何せアマチュアですから)なるべく長く製作過程を楽しむためです。これからも、極力時間かけてゆっくり進めます。構想や部品収集にも結構時間かけましたし。

配線作業開始

真空管アンプ製作:配線が進む

配線がボチボチと進んでいます。(03.0525)                

真空管を取り付けて

真空管アンプ製作:真空管を取り付けて

完成しました

真空管アンプ製作:完成

じゃーん。完成で~~す!!厳密には、まだネーム(エンブレム作成予定)入れるのがまだですが。。
うわさ通りめちゃくちゃ熱くなります。奥の電源トランスの上には余っていたパソコンのヒートシンク載せたり(置いてあるだけです)してますが、気休めです。シャーシには長く触る事ができません、やけどします。ちょうど気候も暑くなってきて、運転中はエアコンもフル回転。東京電力サンごめんなさい。どうしていつもこうなるんだろう?

途中で真空管を壊してしまい

実は配線終わってからが長かったんです。まず、OZEKIサンからお借りしていた出力管壊してしまいました。わー!ごめんなさ~い。
プレートとグリッドのところに、圧着端子で線をつけたのですが無理な力がかかったようで、ガラスがぽろっ。もう一本も空気が入ったようで。。あきらめて新しい管を買いに入ったらアンディクスオーディオサンも「あそこ弱いからそうなりやすいんだよね。」といっていました。この辺がケチのつきはじめで、8012が秋葉原中歩いてもどこにも置いてなくて、やっとアンディクスオーディオさんで「倉庫にあるから来週持ってくるよ」となりました。
他の配線もうできてますからこの数日が実に長い。ところが、やっとGETしたら今度は、1本がヒーター導通しません。取り替えてもらえるというので、また来週。今度は予備も頼みました。

出力管が揃わない段階で

そうこうしているうちに、活きていた1本からは実に良さげな音がします。これは期待大。で、結局このあとも調整とか結構大変で日にちがどんどん経っていきました。でも、長く楽しめてまあいいか。

いよいよ試聴して

ようやくステレオで音が出ましたが、調整中より音がいまいち。1日たって、ようやくいい音が出始めました。とにかく音質は、宍戸氏の本に書いてあるとおりで、suzukiさんやOZEKIさんの言う通りでした。

1)音が分厚い。
2)低音、重低音がすごい。
3)高音もしゃきっとしている。
4)ボリュームを絞っても迫力がある。

百十番が付け足す事何もありません。こう言うのも珍しいと思いますが、本当です。あえて言うなら「ゴージャスな音」です。更には宍戸氏の指摘通り、通常の真空管アンプとは一味違った第三カテゴリーのアンプだと思えます。オーディオ的には次元がひとつ高いような、それは間違いありません。

自作した真空管アンプ:上方向から
明るく光るトリタンの真空管

後ろから見ると分かりますが、スピーカー端子、電源インレット、電源スイッチが後ろ側のシャーシ上部に配置されています。また、運転中はトリタンが電球のように明るく光ります。

完成した内部配線を見ると

真空管アンプ製作:完成した内部配線、はらわた

調整後のハラワタです。内部にもトランスが2個入っています。

反省

娘に見せたら、出力管についている紐は何だと指摘されました。そうなんです。suzukiさんにもアドバイス貰いましたが、当初からこの8012の難しさは、足にソケットがなく、上に端子が出ているプレートとグリッドについては高温になるため安易に半田付けはできません。半田も溶けるそうです。オリジナル作者の宍戸氏は、出力トランスに括り付けると言う離れ業をやっていますが、百十番は単線にガラスチューブ巻いて圧着と言うのしか思いつきませんでした。
ビジュアル的には、このガラスチューブが白いのでうまくありません。写真でおわかりのとおり、ダニ・シラミ(つまり節足類?)の拡大図のようなグロテスクな物になっちゃいました。ホームセンターの部材で作ったシャーシも今ひとつだったかなと思います。熱がすごい、ハムが残るという欠点もありますが、これは最初から判っていた事でこの回路の特徴なので仕方ありません。
とにかく、こんなややこしいアンプを、「シャーシ作って」「穴あけして」「電源トランス4個も使って」と作り終える事ができたのですから、初心者で、不器用な下手くそでも何台も作れば(キットから数えて8台目)何とかなるようです。

改造

長期的に使用して、だんだん欠点が見えてきました。重低音がすごいと最初は思ったのですが、これは大音量時の話でエージングが進むとむしろ低音が貧弱に感じてきました。さらに、ハムを何とか取れないものだろうか。低音の弱さは出力トランスではないかと考えられます。ノグチのPMF-10WSは、悪くないのですがもともと帯域広くないところに定格に近い電流を流していますのでややつらい感があります。もう少し大きいものにしたいなあ。
ハムについては、アースの見直しやらB電源のリップル取りとしてのコンデンサー追加やもうあれこれやりました。掲示板でも多くの方からアドバイスをもらいました。ところが、対策をしてもあまり変わる気配がありません。もう後考えられるのはトランス間の干渉です。何せ電源トランスが4個で、チョークを入れると9個のトランスが使用されていますので無理もありません。高価な大容量オーディオ用電源トランスをケチったのと角穴を開けるのがいやだったという怠けのつけがきています。

この二つの問題点は、実は繋がっていました。一見関連のない事件のようですが、犯人は同一だったのです。まるで推理小説みたい。

出力トランスの電磁誘導を対策

最も疑わしいのは出力トランスへの電磁誘導ですから、現実的な対応策としてトランスの向きを変えてみるというのがあります。そういえば、名人の作例は出力トランスの向きがどうも共通しています。B電源流す側を手前にして、スピーカーへの出力側を背にしています。それを百十番は左右に(この方がかっこよいと思った)。配線考えてもちょっと理にかなっていません。

出力トランスをノグチからタンゴに

出力トランスを大きなものに入れ替えてその際に向きを変える。これなら小さな穴をいくつか開けなおすことで対応できます。ヤフオクでタンゴのU-808をゲットしました。国民機2号の50BM8パラシングルで大変結果の良かった人気トランスです。あまり教えたくない秘密のレシピなのですが、実はタンゴの人が雑誌のインタビューで「U-808は自信作」とコメントしていました。実際使用してみてもシングルとは思えない低音の出方が大変気に入っています。このクラスでも百十番にとっては高価で辛いのですが、ポピュラーな製品ですのでヤフオクに中古が結構出品されます。古かろうが中古だろうが音にとってはむしろエージング進んでいて好ましいのです。競争相手も多いのですが、多少見た目に劣るもの(見た目だと程度悪しでも、音は良しと勝手に信じ込んでいる)をがんばって前回も今回も落札しました。

夏場の作業は進まない(真空管は熱い)

夏前に入手したものの、2004年の夏はあまりにも暑くオーディオも少しお休みしました。春には韓国に行ったので旅行癖がついて休みをチョコチョコ取っては、北関東から東北方面にドライブに出かける日々でした。そして、秋がきて涼しくなって再開です。例によって毎日少しづつ楽しみながら丁寧に進めてということでしたが1週間ほどで出来ちゃいました。配線材は今回の隠れた肝なので大いに悩みましたが、最後はケンオーディオさんにお世話になって何とか決定です。ここのご主人とのオーディオ談義は毎回ためになるのですが、今回は橋本トランスの仕掛け人がケンさんだったことが判明したりしました。

8012A真空管アンプ

改造は大成功

お待たせしました、結果ですが掲示板にUPした内容を引用します・

8012A絶好調 投稿者:百十番  投稿日:10月14日(木)18時53分58秒

改装して調子の出てきた宍戸式8012Aシングルですが、エージング続けています。
依然、絶好調です。

ハムが消えたので、皮肉なことに現在我が家では最も静かなアンプとなっています。

弾きものの弦がきれいで、ボリュームを絞っても迫力ありという、管球アンプの高度
な長所が出ています。
さすがに一流ビルダーの回路はすごいもんだと感心です。

回路図は

宍戸公一氏の著書の回路に出来るだけ近付けました。ただし、電源トランスを前段、後段、フィラメント、固定バイアスと分離した(単にケチって汎用品を使用した)ため、実装は一部異なっています。

参考図書:送信管によるシングルアンプ製作集(誠文堂新光社)
こちらの本を基に制作しました

送信管によるシングルアンプ製作集 [ 宍戸公一 ]

その後、KT88シングルに改造しました

2021年4月追記)製作後、少なくとも10年以上は素晴らしい音質のアンプとして、他のアンプと時々入れ替えて使用したのですが、真空管がダメになるので、結局改造しました。KT88シングルアンプへの改造はこちらで詳しく報告しています。